『この人に、すべての良きことが、雪崩のごとく、おきます』
人の幸せを願う
「へぇ～。でも、ツヤだけでお客さんが来るなんて言うのは、不思議すぎます。どうして、こんなことになるの？」
私がそう言うと、紳士は姿勢を崩すことな、ゆったりと構えてこう言いました。
「はなちゃん、『不思議』という言葉の意味を知っているかい？
『不思議』とは、『なんでだろう』と思うことも、みんなで議論することもいけませんよ、ということなんだよ」
「へぇー、そうなんだ・・・・・・。
まっ、いいか、ハッピーだし。
でも、もっとハッピーになりたいな。
何か、いい方法はないかな？」
私がそう訊ねると、紳士はこう言いました。
「じゃあ、人と出会ったら、この言葉を心の中で言ってみるといい。
『この人に、すべての良きことが、雪崩のごとく、おきます』
そうしたら、もっと福相になる。
1日10人でもいいから、やってごらん」
私は、紳士に言われた通り、通りすがりの人にも、その言葉を念じました。
すると、不思議なことに私の顔はますますツヤが出て、出会う人、出会う人に、
「いいお顔をしてますね」
と、言われるようになったのです。
しかも、ランチのお弁当の張り紙をしていても、それまでは注文がゼロだったのに、注文がどんどん舞い込んでくるようになったのです。
呼び込みなど、一切していないのにも関わらず、です。
どうしてこうなったのか、その「不思議」を、私は追求しませんでした。
あまりにも運勢が良くなってきて、毎日が楽しくなったので、どうでもよくなってしまったから。
そして、
「今よりもっと、幸せになりたい」
という気持ちが、どんどん強くなってきたからです。
その願いをどうしたら叶えることができるか。
私は、日々、そのことを考えていました。
光っていると幸運がやってくる!
そんなある日のこと。
紳士が女性を連れてお店に行ってきました。
その女性はシャネルのパンツスーツに身を包み、大きくてキラキラした指輪をいくつもつけ、その人がいるだけで店内がパッと明るくなり、華やいだ雰囲気が漂いました。
聞けば、この女性は紳士の元クラスメイトで、紳士の仕事を手伝っているとのこと。
この時私は、紳士が事業家であることを思い出しました。
そして、二人が楽しそうに仕事の打ち合わせをしている様子を見ていました。
やがて、二人は席を立ち上がり、お店の入り口の方へ歩き出しました。
どうやら打ち合わせが終わったようです。
入り口を出たところで女性は立ち止まり、振り返って私にニコッと笑顔を向け、
「コーヒー、美味しかったです。じゃあ、また」
と言うと、紳士を残し、一人帰っていきました。
その後ろ姿に、私は、しばし見とれていましたが、紳士に促され、二人が座っていた席に腰を下ろしました。
そして、紳士にこう言ったのです。
「素敵な女性ですね。かっこいい。
私、おしゃれで、キャリアウーマンって感じの人に憧れてるんです。
私もあんな風になりたいなぁ」
「なれるよ。はなちゃんもウチの仕事をしてみるかい？」
「えっ、いいんですか？ 私、もっと、もっと、幸せになりたい。是非、私にも仕事をさせてください」
紳士は、ニッコリ微笑み、快諾してくれました。
私は紳士にお礼を言い、続けて、こう訊ねねました。
「今よりもっと、幸せになりたい。
仕事も成功させたい。
そのために、次は何をすればいいの？」
「光っていると、幸運を呼ぶんだ。
だから、髪にツヤを出し、靴もきちんと磨く。
それから、ブランド品とか、高級なものでなくていいから、明るく綺麗な色の洋服を着て、キラキラ光るアクセサリーを身につける」
というものでした。
自分の花を咲かせる
いつものように、突飛な答えに私は驚きつつ、こう言いました。
「でも、アクセサリーって、小さな石でも高いですよね。
今の私には買えないな・・・・・・」
すると、紳士は、
「イミテーションでいいんだよ。遠くにいる人が、
『あっ、輝いている』
と、わかるような、大きくて目立つものをつけていればいいの」
と、言いました。
「どうして、大きくて目立つものじゃないといけないの？」
私が疑問を投げかけると、逆に紳士はこんな質問を私に投げかけてきました。
「はなちゃん、さっきの女の人のこと、どう思った？」
「素敵な人。キラキラしてて、お店の中が華やいで、私、なんだかウキウキしちゃった」
私がそう言うと、紳士は、
「そうでしょ。じゃあ、もう一つ聞くけど、はなちゃんは、花と土、どっちを見ていたい？」
「そりゃあ、花を見ていたいに決まってる」
私がそう答えると、
「他の人もそうなんだよ。
人は綺麗な花を見たいんだよ。
だから、自分が花を提供する。
それが、おしゃれというものなんだよ」
と、紳士は言いました。
「そうか、おしゃれって、自分のためだけじゃないのね。
大きいアクセサリーをつけるのだって、人のためなんだ」
感慨深げに私がそう言うと、紳士は優しい笑みを浮かべながらこう言いました。
「花ってさ、バラの花もあれば、ゆり、ひまわり、いろんな花がある。だけど、どんな花も、
『自分は、あの花より落ちている』
とは考えず、それぞれそれぞれ、精一杯、自分の花を咲かせているんだよ。
だから、はなちゃん、君は自分の花を咲かせればいい」
私は胸が熱くなってきました。
「私の花はここに咲いてますって、周りの人にその花を提供して、明るい気持ちになってもらいます」
すると、紳士は、
「そうだよ。そうすれば、その花の美しさを求めて鳥や蝶が集まり、人々も魅了されて集まってくる」
紳士の言ったことは本当でした。
たった500円ぽっちの指輪でも、大きくて、キラキラしていたら、人は振り返って見るのです。
中には、
「素敵な指輪してるわね。ちょっと、見せて」
と、言ってくる人もいました。
また、このことから、私のお店には、私と同様に紳士を慕って弟子入りした9人の仲間に紳士を合わせた10人が集い、互いの夢を語り合うようになっていました。
私が喫茶店の名前に込めた「十夢想家（トムソーヤ）」というイメージが現実になったのです。
私はもう、毎日がウキウキでした。
私は、そんなウキウキ気分で紳士の仕事の手伝いを始めました。
天国言葉
新しい仕事を始めるにあたり、喫茶店への未練も、みたいけんに対する不安も、私にはありませんでした。
なぜなら、私は毎日、
「昨日より、今日がハッピー!」
だったから。その理由は、
「今よりもっと、幸せになりたい」
という、同じ目標を持つ仲間たちがいたからです。
でも、私はよほど欲があるのでしょうか。
また、
「もっと、幸せになりたい」
が出てきたのです。
そして、いつものように、私は紳士に訊ねました。
すると、紳士の答えは、これ。
「じゃあ、天国言葉を言ってごらん。いいことが立て続けに起きるから」
「天国言葉？ 何ですか、それ」
私がそう言うと、紳士は紙に何かを書き始めました。
「はい、これ」
紳士が差し出した紙を見ると、そこには、こんなことが書いてありました。
＜天国言葉＞
ついてる
嬉しい・楽しい
感謝してます
幸せ
ありがとう
許します
＜地獄言葉＞
ついてない
不平不満
愚痴・泣き言
悪口・文句
心配事
許せない
「これ、なぁに？」
私がそう訊ねると、紳士はこう答えました。
「はなちゃん、言葉には言霊というパワーがあるんだよ。
その言葉を言うと、もう一度、そういう言葉を言いたくなることが起きるんだ。
周りの人をよく見てごらん。
天国言葉を言っている人に、不幸な人はいない。
地獄言葉を言っている人に、幸せな人はいないよ」
「う～ん、確かに」
妙な説得力のある答えに、私は納得してしまい、
「そういえば私、あんまり天国言葉を言ってないかも・・・・・・」
と、言いました。
すると、紳士は、さらに驚くべきことを言ったのです。
「はなちゃん、思ってなくていいから、口にすればいいんだよ。聖書にも、
『はじめに言葉ありき』
と、書いてあるじゃないか。
キリストの教えを信じようが、信じまいが、そんなことは個人の自由だよ。
だけど、そんなことは個人の自由だよ。
だけど、思ってなくちゃ言えない、ということだったら、なかなか言えないよ。どうする？ はなちゃん」
私は思わず、
「天国言葉をたくさん言います」
と、誓っていました。
斎藤一人さんの話を纏めました。
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