「これから企業が伸びるのも潰れるのも、トップの実力次第だよ。
なぜなら、会社は『トップが絶対』という時代になるからなんだ」
「目の前の3人のお客さんを喜ばせてみる」これがコツだよ
それでは、「ひとり勝ちの時代」で求められる戦略とは、どういうものなのでしょうか。
一人さんは具体例を使って、戦略の一つを説明しています。
「居酒屋さんがあるとする。
昔は流行っていたけれど、今はお客さんが3人しかいないと嘆いている。
このままでは潰れてしまう、どうすればいいんだ、というわけだ。
これは簡単。
その三人が喜ぶことを、ひたすら考えて実行していけばいいんだよ。
3人が喜べば、明日も来る。
明後日も来る。
それから友達を連れてくる。
そして、新しくやって来たお客さんを、また、ひたすら大事にする。
きたお客さんをみんな喜ばせていれば『あそこの店は面白い』と評判になる。
そして繁盛していくんだよ。
目の前にお客さんがいるのに、それを忘れて『このままで大丈夫かな』なんて言っていたら、その3人のお客さんも来なくなってしまう。
目の前のお客さんをとにかく大事にして、喜ばれることをする。
商売の秘訣は、昔からこれしかないんだよ。
そして、それはこれからの時代にこそ重要になるんだよ」
先ほど考えたように、「ひとり勝ち」の利点の一つは、個別対応がしやすいことでした。
個人経営の特徴を活かし、顧客のニーズを直接受け取り、即座に決定を下すことで、細かな対応が可能となるわけです。
つまり、「目の前のお客さんを大切にする」とは、個別対応のメリットを最大限に活かすという意味だと考えられるのです。
そして、そしてその個別対応では「喜ばせる」という点に目標を置きます。
目の前のお客さんに何をすれば喜ばれるのかを考え、喜ばれると判断すれば、思い切った手を打ちます。
こうして、ここでも「ひとり勝ち」の経営メリットである、「面白さを出しやすい」という特徴が活きてくるわけです。
また、これまでの顧客戦略について、一人さんはこのような見方をしています。
「新しいお客さんをとにかく取ろうというのは、昔の価値観でしか通用しない。
これは一昔前のやり方なんだよ」
新規顧客の獲得が最優先というやり方は、自社の商品を購入すればどんな顧客でも必ず満足する、という前提がなければ成り立ちません。
顧客が必ず満足するという前提があったからこそ、いかに多くの顧客を獲得するかが勝負となっていたわけです。
しかし、顧客が必ず満足するというのは、モノモノ不足の時代の話です。
物がない時代ならば、商品を提供しさえすれば顧客が満足してくれるという見込みも立ちました。
でも、現在のようにモノ余りの時代には、このような見込みは立ちません。
商品の基本的な性能はどの会社も似たようなものですから、代わり映えのしない商品をただ顧客に持ち込んでも喜んではもらえないわけです。
そこで、新しい顧客を獲得することの前に、現在の顧客を満足させることを考えなければならなくなったのです。
このように、価値観が転換したため、「新規顧客獲得よりも目の前のお客さんが大事」と一人さんは見るわけです。
実力ある経営者が、個人経営の感覚で運営できる組織へとビルドアップさせ、新規顧客を見る前に、現在の顧客の満足を追求していくことが、これからの生き残り戦略となるようです。
お客さんを喜ばせるから、売り上げが伸びる
これからの時代に必要なこととして、一人さんは次のような指摘もしています。
「売上を伸ばすために、お客さんを喜ばせるんじゃないんだよ。
喜ばせるから、売り上げが伸びるんだ。
これを同じことだと思っているようじゃ、ダメなんだよ」
これを聞いた時、正直に言って私は同じではないかと思いました。
二つの言葉の差は、本の微妙なものだという気がしたからです。
ところが、このニュアンスの違いを感じ取れるかどうかが、これからの時代には決定的な差となって表れてしまうようなのです。
一人さんは二つの言葉の違いを、こう説明します。
「売上を伸ばすために喜ばそうとしているような人のそばにいて、お客さんは嬉しいと思うかい?
そんなところにいてお客さんは楽しいと感じるかい?
感じないだろう。
今までの商売のやり方では、儲けよう、儲けようとしていた。
すると、そのうち儲からなくなったんだよ。
なぜならば、お客さんが楽しくないからなんだよね。
例えばデパートがそうだった。
来たお客さんにどうやって売ろうか、そればかり考えていたんだ。
売上を伸ばすことばかり考えているうち、デパートは面白くなくなってしまった。
だから、お客さんがデパートで来なくなったんだよ」
売上を伸ばすために、お客さんを喜ばす。
この言葉を使う人には、顧客のことよりも、自分達を中心に据えた意識があります。
つまり、「企業側」「売る側の視点」からビジネスを見ているということです。
それが問題なのだと一人さんは言いたいようなのです。
売る側の視点からビジネスを見ている場合、顧客の満足を追求し、喜ばれることをしているつもりで、実は少しも喜ばれていないということが見えなくなる危険性があります。
また、満足とあくまでも心理的なものです。
ビジネスをしている人が顧客よりも自分たちにしきを向けていることが悟悟られれば、顧客の満足は必ず損なわれます。
つまり、これからの時代には顧客満足が勝負を決するため、売る側の視点からビジネスを見る意識はもう通用しないということになるのです。
ことに、小売業のように、顧客が一般の消費者である場合、それを悟られれば間違いなく顧客に逃げられてしまいます。
「アメリカ人にはレジャーが多いんだよ。
だから、買い物何かその後にするパーティーなんかの準備に過ぎない。
要するに、買い物はただの仕入れと同じだから、安ければそれでいいんだよ。
だから、倉庫みたいな超大型スーパーが流行るんだ。
でも、日本人にはレジャーが少ないんだよね。
買い物をすることそのものがレジャーなんだ。
だから、買い物が楽しくないと誰も来なくなってしまうんだよ」
一人さんは日本の消費者を顧客とする場合、顧客満足とは「楽しさ」を意味するので、売る側の視点からビジネスを見る意識が致命的だということになるのです。
さて、売る側の視点の対極にあるのが、顧客からの視点ということになります。
一人さんはこれについて、次のような例を挙げています。
「あるスーパーが潰れそうになった時、マグロお客の目の前でさばいて売るということは始めたんだ。
お客さんは100キロ近くもある本鮪を目の前に出され、日本刀ほどもある長い包丁でマグロを捌く様子に驚いた。
珍しいものが乱れるというので評判になり、食品売り場に客が集まってきたんだよ。
これが、お客さんを喜ばせるから売上が伸びる、ということなんだよ」
一人さんの言う「お客さんを喜ばせるから、売り上げが伸びる」とは、顧客の視点から見る意識で、顧客の満足を追求するということのようです。
この実演販売でマグロの売り上げなど、たかが知れています。
その上これをセッティングするには、少なからず手間がかかるはずです。
そんなことをするよりも、普通に作業所で解体したほうが遥かに楽です。
ですから、もしこの実演販売の担当者が売る側の視点でビジネスを見ていたら、手間の割に対して売上に貢献しないような、マグロの解体の実演など考えなかったでしょう。
そうではなく、「顧客を喜ばせたい」という意識が先にあったからこそ、このヒットにつながったと推測する事ができるわけです。
つまり、売る側の視点からではなく、顧客の視点からビジネスを見る意識を持つことで、初めて本当の顧客満足は追求できるということなのです。
「売上を伸ばすために、お客さんを喜ばせる」でなく、「喜ばせるから、売り上げが伸びる」
一見同じように見えた二つの言葉ですが、全く対極的な意識が底に潜んでいたわけです。
そして、その意識の持ちようを誤っていては、これからの時代には通じないということなのです。
まず「お客さんを喜ばせる」という視点を持つこと。
これがビジネスで成功する鍵となる時代が来たのかもしれません。
「これから伸びる会社」は「経営者が脚光を浴びる会社」だけ
「これから企業が伸びるのも潰れるのも、トップの実力次第だよ。
なぜなら、会社は『トップが絶対』という時代になるからなんだ」
次の時代では、企業はこんな形態に向かうと、一人さんは見ているようです。
価値観が変わって「ひとり勝ち」の時代に入ると、従来の大企業的なやり方より個人経営的なやり方の方が有利に働くということは、これまで見てきました。
個人経営のやり方を大きな企業で実践する場合、「トップ絶対」という体制が必要だと、一人さんは言います。
トップ絶対の体制が必要な理由について、一人さんはこう言います。
「会議で、あーでもない、こうでもないと時間を使い、結局は、他の会社のやり方を模倣するだけというのでは、遅くてしょうがないんだよ。
社長が自分だけで即決し、会社全体がそれに従って迅速に動く。
これからの企業はこんな形で『トップ絶対』という体制にしないと、生き残れないんだよ。
これは個人経営の会社と同じだ。
これからは、大企業も個人経営のようになっていくしかないんだよ」
個人経営のメリットとは「個別対応」「面白さ」「新しさ」という三つの点にあり、これらが顧客満足を追求するうえで有利に働くということでした。
これらのメリットをうまく出すには、トップの決断、会社のそれに対する反応、顧客ニーズなどの情報獲得と伝達、こうしたあらゆる面でスピードが要求されます。
そこで、学期制を廃し社長だけの判断で会社の意思を決定する、それに全社員が絶対的に従って行動するという、トップ絶対の体制が必要になってくるわけです。
このような体制はアメリカでは普通に見られるそうですし、日本企業でも着実に伸びているところでは、すでにこのような体制と近づいてきているようです。
現に、今時際立った好業績を上げたり、再建に成功して注目を集めている会社は、会社組織そのものよりも、経営者が脚光を浴びています。
また、トップ絶対の体制について、一人さんは重要なポイントを指摘しています。
「トップの意思で会社が動くということが、トップの実力次第で企業の業績書もあるということになるんだよ。
言ってみれば、戦国時代みたいなものだね。
ただし昔と違って、何か失敗が怒ってもう殿様の代わりに家老が腹を切ってくれたりはしない。
会社が失敗したら、トップは下に責任をとらせることはできないんだ。
自分の腹を切るしかないんだよ。
要するに、赤字を出せばトップ交代ということだ。
トップとして会社を動かす代わりに、実力がないと分かれば、他の人にトップの座を追われるんだよ。
トップは決定を全て自分の責任においてやる。
出てくる結果についても、自分で全責任を負うんだよ。
だから、これからの時代は、実力のある優秀な人しかトップになれないんだ」
優秀な人しか企業のトップは勤まらないという見方については、こんな異論もあるかもしれません。
「いや、社長が平凡な人でも、優秀な補佐役がいれば企業は大丈夫なんじゃないか。
実際、大企業では、先代から仕えてきた優秀な大番頭が、平凡な2代目社長を補佐して、
業績を伸ばしているところもある。
先代からの大番頭がいない社長も、有能な人は探してきて自分の補佐につければいいのではないか」
これについて、一人さんの見方はこうです。
「昔なら、殿様は家柄で決まるところがあったので、優秀の補佐が何とかするということもできたんだよ。
少し前までの日本にも、江戸時代の名残のようなところがあったから、血筋で社長を決めて大番頭が補佐役でも通用した。
でも、これからは状況が激しくなり、競争が当たり前という時代になるよね。
すると、トップが優秀でない場合、優秀な補佐を妬んだり、自分の後釜を狙っているんじゃないかと疑って気が気でなくなってしまったりする。
そして、優秀の補佐をつけても、その人使いこなすより、追い出すことを考えるようになってしまうんだよ。
そのようなことをせず、優秀な補佐は使いこなせるなら、それは優秀なトップなんだ。
結局、優秀なトップでないと、優秀な補佐を使いこなせなくなるんだ。
今は、三国志の時代のように、諸葛孔明が出てきて劉備を皇帝にするようなわけにはいかないんだよ」
企業はトップ次第。
トップの実力が企業の生死を決める。
これからの企業経営者には、これまでの時代にも増して、重い責任がのしかかってくるわけです。
ただ、今まで以上の責任を求められる代わり、企業トップにはこれまでよりもプラスの面まで出てくるはずだと、一人さんは言います。
「実力を求められる代わり、報酬もこれまでとは変わってこなくてはならないんだよ。
今までとは違い、経営責任者の給料は1億円、2億円は当たり前ということににする必要があるんだ。
そうでなければ、実力主義の企業トップなど望めないよ。
社長の給料が社員の何倍以内、など特にが口を出しているようではどうにもならない。
このままでは、日本企業が時代の潮流に取り残されてしまい、日本経済はダメになるだろうね」
なかなか変わらないのがこの国の制度ですが、経済界の妖精に押されてこのことだけは少しずつでも変わっていくと、一人さんは見ているようです。
斉藤一人さんのお話を纏めました。
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