銀行に顔が利くと「すごい」というけれど、それ、お金を借りたいと思っているから「すごい」というのであって。
それ、プロの商人からしたら素人です。
素人にほめられたら終わりですよ。
大手を見抜く眼力
全国チェーン展開している居酒屋さんがありました。
そのお店は、最初、北海道にあるたった8坪のお店一軒でした。
それが2軒目、3軒目と増えて、全国にチェーン展開するようになったんですね。
ところが、ある日、その居酒屋の社長のところへ、ある大手商社がやってきて「一緒に仕事しましょう」って。
「おたくの会社を上場会社にし、事業を拡大するお手伝いを私共がいたします。もちろん、社長はあなたですよ」って。
いい話ですよね。
その居酒屋の社長も「いい話だ」と思ったから、誘いに乗ったんです。
会社もどんどん大きくなったのだけど。
ある日、「倍額増資します」ということになったのです。
倍額増資ということは、社長が持っている株と同額の現金を払わないといけないのですね。
そうすると、社長は、1回は払えるんですよ、全財産はたいたりして。
ところが、しばらくすると、「もう1回倍額増資しましょう」ということになる。
でも、社長は「もう1回分」のお金は持っていません。
株は持っているけれど、それを売るわけにはいかないから、倍額増資には応じられないのです。
ところが、その商社は大きいので平気で応じられるんです。
そうすると、社長より商社が持っている株が多いということになってくる。
要するに、商社が筆頭株主になったのです。
そしたら今度、社長は株主総会で筆頭株主に「社長解任」っていわれて、社長を辞めさせられた上に、自分が作った会社も全部取られちゃった。
これは法律に触れないけれど、会社乗っ取りの常套手段。
高等戦術みたいなものですね。
「大手がそんなことをするんですか?」って、しますよ。
大手だから。
そういう技を出していいのです。
要は、知らなかったほうがおかしいのです。
だから、大手は平気でこういう高等戦術みたいなことをするんだ、ということを頭に入れておかないといけません。
そして、大手から「一緒に仕事しましょう」と言われたら、「増資の時はどうするんですか?」とか、あらかじめ聞いて契約を交わすとか、しないといけないのですしないといけないのです。
それぐらいのことは、分かってないとね。
柔道でも、段が上になってくると、すごい技をかけてきますよね。
それと同じで、高等戦術をやる人間も上に上がれば上がるほど、すごい技を出してきます。
みんな、すごい技を持っているんですよ。
すごい技の使い手は、普通の人にはその技をかけません。
技を掛けられたことがないと「大手はそんなことはしない」と思うけれど、大手同士ではよくやるのです。
だから、あなたが上に上がっていくとき、そのすごい技を知らないと、見事にひっくり返されますよ、ということなんですね。
例題として居酒屋を出しましたけど、例えば、工場をしている人でも大手から仕事を頼まれることがあります。
小さい工場でも、「あの会社は、すごく、良い商品を作ってるな」って評判がたつと、大手は仕事を出すんですよ。
その時、大手から「年間このぐらいの量を作って欲しいんですけど、応じられますか?」と言われると、そこの工場は嬉しくなっちゃって、無理をしてでも応じようとするのですね。
そうすると、今度、銀行の人がやってくる。
それで、何億円かけて、「ここに工場を新設しましょう」という話になって、新設するのです。
そうやって工場が全部出来上がって少し経つと、なぜか、そこの工場に仕事を頼んでいた大手からの仕事がストップします。
そうすると、工場の社長は支払いができなくて困り果ててしまうのね。
そうすると、お金を貸してくれた銀行の人が来て、「おたくを買いたいと言っている会社がありますから」という。
それで、そこの会社の人に会ってみたら、なんと、工場に仕事を頼んでいた大手だった。
気づいた時は後の祭り。
工場から、そこが持っていた技術まで全部取られちゃうのです。
「そんなのありですか」って、ありですよ。
だから、これを悪と呼ぶのか、何と呼ぶのか知らないけれど、そのぐらいのことを平気でするということを覚えておかないとね。
そうやっていうと、「でも、自分はそんなひどいこと絶対しませんよ」って、いう人がいるんですけれど。
それは、人間として、すごく大事なことだと、私も思っています。
もちろん、私だって、そんなことはやりません。
だけど、自分がしないのと、人がしないのは別です。
平気で、ものすごい高等戦術を出す人がいるのです。
それを「知らなかった」いうのはおは、社長業では通りません。
社長は、従業員を守る立場なのだから、ね。
眼力がないと、社員も、家族も守っていけないのです。
いいことの後の危険を見抜く眼力
会社を経営していると、本当、いろんなことが出てきます。
前に話したような高等戦術の使い手が出てこなくても、いろんなことが起きてきます。
例えば、お得意さんの会社から「うちの会社で今度、こういう商品を出すから、オタクの工場で作って下さい」と頼まれて作ることになった。
それで、その商品が爆発的に売れて、生産ラインが追いつかなくなってくると、慌てて設備投資したりするんですけれど。
今のままでは注文に応じられないからって、別の場所に大きな工場を建て、機械も入れて、人もいれて、「これから我が社は、どんどん利益を出します」と言ったら、従業員は拍手喝采です。
不動産屋、建設会社、機械屋、材料屋、みんな、もろ手を上げて大賛成です。
融資してくれた銀行も喜びます。
でも、その商品の寿命が続かなければ、急に売れなくなったら、お得意さんの会社からの注文はストップになってしまいます。
その時残るのは、大量の在庫と設備投資にかかった莫大な借金だけです。
被害を被るのは、あなたと、あなたを支えてくれた従業員です。
こういうことも頭に入れながら、お金を儲けて、会社を維持していかないといけません。
だから、眼力って大切です。
素人にほめられたら終わり
経営者の眼力、商人の眼力。
その中に「素人にほめられたら終わり」という話があります。
例えば、事業を拡大するのに、銀行がウチにこんなに融資してくれました。
そうすると、周りの人は「すごいですね」って。
「銀行に顔がきいて、社長、すごいですね」
「おたくは銀行から信用あるんですね、すごいなぁ」
そうやって、ほめる人は誰ですか?
周りの人ですよね。
周りの人って、素人ですよね。
わかりますか?
「融資」というけれど、それ、ただの借金です。
それが分からないのは素人。
銀行に信用がある人とは、借金のない人です。
そして、一番信用あるのは、銀行にお金を積んでいる人です。
銀行に顔が利くと「すごい」というけれど、それ、お金を借りたいと思っているから「すごい」というのであって。
それ、プロの商人からしたら素人です。
素人にほめられたら終わりですよ。
自社ビルを建てた、都心の一等地に店を出した、こういう土地を買いました、「わぁ~すごいなぁ」って。
それをいってる人、素人の人ですよね。
一体、借金の返済はあと何十年続くんですか?
素人に褒められたら終わりですね。
もう一個いうと、商人で転ぶ人というのは、有名人が大好きだったり、政治家が大好きで、やたらと写真を撮ったり、ああしたり、こうしたり。
芸能人や政治家に知り合いがいるというと、「すごいですね」と言われるけれども、政治家が税金を使って橋をかけようが、電車を通そうがが、私たち商人は税金を払っているんですよ。
「税金を使う人間より、払っている人間の方がすごいんだ」って。
そう思っていながら、ペコペコした上に、無駄金を使うのです。
今、私がいったことが全部正しいとはいいません。
でも、本来、商人というのは、商人の腕を上げていけばいいのです。
商人の腕を上げるというのは、どんな世の中か、次はどんな時代が来るかを見抜けばいいだけなんです。
これができれば、仕事がどんどん伸びます。
だから、うちの会社だって、自社ビルはありません。
私がこの仕事を始めた時から、ずっと、街外れの小さな事務所で仕事をしています。
ちなみに私、毎年、現金で自社ビルが建つぐらい働いていますが、必要のないものはいらないのです。
従業員はたった5名です。
唯一の大卒の男性が一人で、後は近所に住んでいるパートさんです。
その唯一の男性も、たまたま法政大学を出てた、ということだけであって。
全く学歴に関係なく、人柄の良さで選びました。
その証拠に、入社して何年も経ってから、大卒だということを私は初めて知ったのです。
うちの従業員は働き者で、パートのお姉さん達まで、全員、タオルのハチマキで、金のロレックスをして荷造りをしています。
これ、本当です。
笑えるでしょう。
なおかつ、私は月に1回も会社に行かずに外をうろうろしています。
それでも、仕事を始めてから何十倍、何百倍と、利益を上げてきて、この不況の最中でもうちの会社は伸びているのです。
世間では、売上を重視しますが、肝心なのは利益です。
こういう会社をプロの人が見るとは、「こんなに小さい会社で、こんなにも利益を出し続けるって、すごいですね」
「仕事の収入だけで長者番付に入り続けているなんて!」と。
わかりますか?
本当にいいたくないけれど、こういうのが「腕が良い」というのです。
だから、ウチの仕事が伸びているのは、私の腕と、働いている人、「まるかん」の仲間たちが優秀なのであって。
銀行の信用だとか、自社ビルだとかは、学歴と同じで、全く関係ありません。
私なんて、銀行の担当者の顔を知りませんからね。
銀行の人も私の顔を見たことがない。
うちの従業員から「銀行の方が一人さんに会いたがっています」という話は聞くけれど、私、絶対に銀行の人と合わないのです。
だって、お金を借りる気なんて、一つもないんだもん。
無借金経営ですから。
だから、プロの世界ではこういうのが「腕がいい」というのです。
これも眼力です。
素人いうことに惑わされないでください。
追伸 取引していても信用はつきません
「その時のために銀行と取引してればいいんだ」って言うけれど、銀行は金融のプロ、金貸しのプロなんだよ。
「取引していれば信用がつく」って言うけど、ずっと長々、取引しながら、貯金もないとこを、銀行が信用してるわけがないんだよ。
そういう仕事なんだよ。
銀行が急に薄情になったんじゃない、昔からそうなの。
そういうものなんだよ。
そういう目に会いたくなかったら、貯金してればいいの。
「信用ついて、銀行からお金を借りられるんです」って、商人が金貸しにお客されたら終わり。
銀行は「あそこはお金かしても、きちっと返すから信用ある」とかって、腹なんかでは思ってないんだよ。
銀行にとって、ちょくちょく金を借りにくる人間はいいお客さん。
だって、金利が付くからな。
だけど、信用はない。
信用があるのは無借金の人、無借金の上に貯金ある人はもっと信用がある。
で、一番信用のある人は、無借金の上に、どんどん貯金を増やしていく人。
これが、本当の信用なの。
わかるかい。
銀行にとって、借金するお客は都合のいい人間だから、褒めてくれるよ。
だけど、腹なんかではそう思っていない。
もし、自分が銀行家だったらと仮定して、考えてごらん。
お金を借りに来て、返さない奴だったら「これはひどいやつだ」と思うよな、借りに来て、ちゃんと返すやつは「これはありがたいお客さんだ」って思うだろ。
だけど、経営者で、1回も借りに来ないで、貯金をどんどん増やしていく奴がいたら、「こいつ、凄いな」って思うよね。
どっちかになるんだったら、俺はこっちを目指してるだけ。
ま、すでに借金しちゃった人は、とっとと返す。
どうしても、しょうがなくて借りたんなら、ものすごい勢いで返して、今後、金利のつかない自分の金で、商売することだな。
斉藤一人さんのお話を纏めました。
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